白星ならず、創部20年で初出場宮崎学園、河野投手が164球の熱投、崎田監督は甲子園のエース、800人の応援団にネットも注目

甲子園

第105回全国高校野球選手権、大会6日目の第4試合に甲子園初出場の宮崎県代表の宮崎学園が、栃木県代表の文星芸大付属と対戦します。

第105回大会では、初出場チームは6校ありました。宮崎学園は、6校のうち最後の登場、2回戦からとなります。

宮崎大会はノーシードから頂点へ

宮崎学園は、宮崎大会をノーシードから勝ち上がってきました。準決勝も決勝戦も、2試合連続となるサヨナラ勝ちで甲子園への切符をつかみました。

これまで、宮崎学園の最高成績は、夏の宮崎大会での準優勝でした。2015年の夏は宮崎日大との決勝で敗れました。2020年の夏に開催された宮崎県独自の大会でも準優勝でした。

2022年の春の九州大会県予選では優勝をおさめましたが、本大会に向けてのチームの状態はあまり良くありませんでした。結果、県大会をノーシードから上り詰めました。

宮崎学園の歴史、野球部は2003年創部・20周年の夏

宮崎学園は、宮崎県宮崎市にある1939年(昭和14年)に創立された私立校です。創立当時は、宮崎女子商業学院、宮崎高等裁縫女学校(宮崎女子実践商業学校と改称)と呼ばれ、戦後何度か改称を経て、長年、宮崎女子高等学校として親しまれてきました。

2003年(平成15年)から男女共学となり、現在の学校名となりました。現在の生徒数は972人(うち女子665人)です。

野球部は「笑顔を忘れない、チャレンジャー精神で戦うチーム」

野球部は、共学となった2003年に創部しました。同校のホームページによると部員数は46人です。ちょうど今年で創部20年を迎えます。

宮崎学園高校から7キロ離れた、生目の野球部専用野球場(MGスタジアム)で、月曜日を除く週6日間練習をしています。

宮崎学園のキャプテンの田口周選手はチームについて、組み合わせ抽選会で次のように語っています。

「チーム全員が笑顔を忘れず、チャレンジャー精神で戦っていけるチームです。」

目標に甲子園出場を掲げ、同チームの1番の目的は、生徒一人一人が次のステージで活躍できる人材育成、高校生活での自己実現を目指してきました。

崎田監督の経歴3季連続甲子園出場のエース「当たり前のことを当たり前にこなす」がモットー

宮崎学園を率いる崎田忠寛監督は41歳で、ご自身も甲子園出場の経験があります。

左が崎田忠寛監督。対戦相手となる文星芸大付の高根沢力監督と。

長崎日大のエースとして、3季連続で甲子園のマウンドに上がりました。2年生の夏の大会(1998年)、3年生の春の大会(1999年)、そして3年生の夏の大会(1999年)に出場しました。

崎田監督が出場した2年生の夏の大会は、横浜高校の松坂フィーバーに沸いた大会です。この大会では、長崎日大は1回戦で敗退しました。3年生の春も1回戦で敗退しました。

崎田監督がエースとして出場した3年生の夏の大会で、長崎日大は、1回戦で西東京代表の日大三高と対戦し、ストレートとカーブを武器にした好投で完封勝利を挙げました。

そして2回戦では1998年の夏の大会でベスト4となった高知県代表の明徳義塾を相手に、延長10回までもつれる試合でサヨナラ勝ちしました。

3回戦の相手校は、北北海道代表の滝川第二でした。その後中日ドラゴンズに進む福沢投手と対戦し敗れました。甲子園ファンの間では、長崎日大史上で強力チームの一つと挙げられています。

その経験がある崎田監督は、選手たちに「基本的なプレーを大切にする」ことや、「当たり前のことを当たり前にこなす」ことを伝えてきました。

例えば、学校生活では挨拶をすることや授業をきちんと受けることをはじめ、毎日の生活を丁寧に送ることを伝えてきました。

野球においては、打席ではセンター中心に打ち返したり、守備ではボールを基本通りに捕球して投げるといった、攻守ともに堅実なプレーを求めてきました。

また崎田監督は、出場を決めた後甲子園について次のように語りました。「甲子園は選手としても人としても成長できる素晴らしい場所。全力を出せるよう経験も伝えていきたい」。

そして対戦相手の高根沢監督との対談時には、「甲子園は人生が変わる場所ではないかと思っている。私も人生が変わって、今も野球をやっています」とも語っています。

毎日積み重ねてきたものがあれば、大舞台に立ってもそれが自分の支えになることを、自らの経験から伝えているのかもしれません。

応援団が初出場にあわせて結成される

野球部の初出場にあわせて、宮崎学園では学校をあげた応援団が結成されました。8月10日夜、生徒や職員、保護者などおよそ800名がバスに乗って、甲子園に出発しました。バスは25台です。

宮崎学園ホームページ

宮崎学園ホームページ

甲子園での応援に向けて、吹奏楽部やチアリーダーや男子応援リーダーによる「生徒応援団」の合同練習が8月4日に開催されました。

宮崎日日新聞

チアリーダーのメンバーは、普段はダンス同好会として活動しています。男子応援リーダーも甲子園に向けて臨時で集まったメンバーで結成されています。チアリーダーは、宮崎大学のチア部「Daisy Girls(デイジーガールズ)」から指導を受けました。

ひなた宮崎経済新聞

吹奏楽部は、7月31日に「第47回全国高等学校総合文化祭」から帰ってきたばかりでした。また8月末にも九州吹奏楽コンクールが控えている中、短い練習時間を経て、全体の応援練習に臨みました。

ひなた宮崎経済新聞

甲子園でアルプススタンドで、応援団の指揮を執るのは、応援団長の澤晃真さんです。バスケットボール部で3年間プレーをし、それを応援してくれた恩返しの気持ちも込めて、応援団が一丸となって勝利したいと語っています。

今からアルプススタンドが、力強い宮崎学園のカラー・緑でいっぱいあふれる光景が浮かびます。

いよいよ8月11日第4試合、プレーボール

崎田監督は初戦に向けて、次のように語っています。

「キーマンは、投手の河野選手。河野選手が最少失点に抑えてくれないと、うちは勝てない。河野選手の出来次第だと思う。」

「粘って粘って終盤までいって、最後に勝ち越すのが理想。」

「強いチームと試合ができることに感謝する。初出場なので、選手はものすごく緊張すると思う。地に足を着けて笑顔で野球ができればと思う。」

崎田監督のコメントにあった河野投手は189センチの長身です。コントロールが巧みで、ストレート、カーブと投げ分け、打者を狙いを定めさせないピッチングを繰り広げます。

さて、どんな展開になるでしょうか。試合が待ち遠しいですね。

惜しくも初戦で敗退

宮崎学園は、8月10日の初戦で、文星芸大付属に7-9で敗退しました。

試合の中盤4回の裏に、文星芸大付属にリードを許した後に、すぐ逆転し、両校は点を取り合いました。

終盤にエース河野選手の疲れが見えてきたころ同点に追いつかれ、さらに逆転されました。逆転された後の8回裏は得点とはなりませんでした。

9回裏、宮崎学園の最後の攻撃です。ベンチから河野選手は、7回にエラーとなってしまったチームメイトの打席を見守ります。

1アウトを取られながらも、ランナー1塁・2塁のチャンスを作りました。最後はサードへ真っ正面に転がっていったゴロでアウト、その流れで送球され2塁ランナーもアウトとなり、宮崎学園の初戦は終わりました。

崎田監督のコメント

試合終了後に、崎田監督はインタビューで次のように述べています。

「こんな展開になるとは思わなかった。要所で集中力が切れた。そこを何とかできれば勝ちゲームにできたが、大事な所でエラーが出てしまった。」

「先発の河野ももう少し踏ん張ってくれると思っていたが、甲子園の独特の雰囲気でいつものようなボールではなかった。2巡目から、相手打線がしっかり合わせてきた。(文星芸大付は)走れるし、守れるし、一人一人のバランスが良く素晴らしい選手が多かった。」

「(甲子園出場は)すごく意味があることだと思いますし、またこれから甲子園で1勝という目標もできたので、選手たちはすごくいい経験になっていると思います」

「河野はまだ2年生なので将来性がある。ここに戻ってこられるような活躍をしてほしい。」

エース河野選手は、今大会最多の164球を投げぬく

河野投手は、宮崎大会から投げ抜きました。この試合では球数は164球となり、今大会で最多を記録しました。

河野選手は、インタビューで「最後は気力で投げた。3年生を勝ちに導いてあげられなかったのが悔しい」と語っています。

また逆転を許した8回について「体力の限界がきていた。ここは気力で行くしかないと思っていた。ヒットを打たれたのは自分。チーム全員で一致団結できなかったことが敗因」とも語りました。

あくまでもエラーによって得点されたのではなく、そもそもヒットを打たれた自分が敗因であるという河野選手のコメントから、野球はチームプレーであるということ、仲間を思う気持ちが伝わってきます。

応援団も注目を集めていた

宮崎学園の応援団は、甲子園出場にあわせて初めて結成されました。全体練習は少ないと報道されていましたが、その仕上がりは素晴らしいものでした。ネットではその応援にも注目が集まっていました。

https://twitter.com/senna0726/status/1689906417183174656?s=20

宮崎学園、さわやかな緑の旋風でした。また宮崎大会を制して、甲子園で会えることを楽しみにしています。

*アイキャッチ画像は、8月6日の開会式で入場更新する選手たち(朝日新聞)

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